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備瀬の別邸
備瀬のフクギ並木に佇む別荘
沖縄本島北部、本部町の備瀬。集落を包むように連なるフクギ並木は、強い日差しや海風から暮らしを守りながら、長い時間をかけて独特の風景をつくり上げてきた。その一角に建つ「備瀬の別邸」は、この土地に新しい建築を置くというより、すでにある風景の中に、そっと居場所をつくるように計画された別荘だ。
フクギを残すことから始まった計画
設計の出発点となったのは、敷地の中央をまっすぐに伸びる既存のフクギだった。
当初は、建物を小さなボリュームに分け、木々の間を縫うように配置する案も検討された。しかし、オーナーの要望と、何十年、何百年という時間をかけて育まれてきたフクギの景観をできるだけ残したいという思いから、計画を見直した。建物の配置を工夫し、伐採する木を最小限に抑える。新しい建築を主役にするのではなく、既存の木々を中心に据えることで、この場所にしかない風景を受け継いでいくことを選んだ。
建築ではなく、風景の一部になる
建物は、フクギの間に静かに佇む。窓の向こうには緑があり、視線を少し動かせば、木漏れ日や風に揺れる葉が目に入る。室内にいても、建築と自然との境界はどこか曖昧だ。
別荘でありながら、自然を眺めるための建物というより、自然の中で過ごすための器、といったほうが近いかもしれない。
ヒンプンと琉球石灰岩がつくる沖縄の庭
庭にも、この土地の記憶をつなぐ素材が選ばれた。沖縄の気候に馴染む植栽を配し、庭師が手がけたのは、琉球石灰岩を積み上げたヒンプン。沖縄の伝統的な住まいに見られるこの石壁は、視線をやわらかく遮りながら、外と内を緩やかにつなぐ役割を持つ。
ここでは機能的な境界というより、庭の風景をつくる要素として取り入れられている。
外壁にも琉球石灰岩をあしらい、塗装の色味も石の表情に近づけた。新築らしい白さや強いコントラストをあえて抑え、周囲の緑や木々の幹、石垣と馴染む色彩に整えている。
完成した瞬間がピークではなく、植物が育ち、石が風雨にさらされ、建物が少しずつ風景に馴染んでいく。そんな時間までをデザインしたような佇まいだ。
既製品ではなく、一からつくる
一方、室内に目を向けると、外の静けさとは対照的に、細部までつくり込まれた空間が広がる。
インテリアは共同設計者を中心に、家具からキッチン、浴室、サウナに至るまで、一つひとつをオリジナルでデザイン。既製品を組み合わせるのではなく、素材や寸法、ディテールを吟味しながら造作で仕上げている。
空間ごとに異なる表情を持ちながらも、素材感やプロポーションに共通する美意識があり、別荘全体に静かな統一感をもたらしている。
暮らしの細部に宿る美意識
目を引くのは、華美な装飾ではない。触れたときの素材の感触、光の入り方、家具の高さ、視線の抜け。日常の中では見過ごしてしまいそうな小さな要素が丁寧に積み重ねられ、ここで過ごす時間そのものを心地よくしている。
時間とともに育つ別荘
備瀬のフクギ並木がそうであるように、風景は一日で完成するものではない。この別邸もまた、時間とともに少しずつ土地に馴染み、木々や石、庭の緑とともに、その場所だけの表情を育てていく。
自然を借景にするのではなく、自然とともに歳月を重ねる。「備瀬の別邸」は、そんな沖縄らしい別荘のあり方を静かに示している 。
[ DATA]
設 計 仲本 昌司
作品名 備瀬の別邸
敷地面積 917.60㎡(277.57坪)
延床面積 326.33㎡(98.71坪)
構造規模 地上2階
建物用途 住宅
株式会社ADeR(アデル)
https://aderarchitects.com/

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