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5BOX(五つの箱)
余白が暮らしをつくる、高台の住宅
高台に建つこの住宅は、「部屋」を並べるのではなく、「箱」を配置するという発想から計画されている。
敷地は北と南の両方向に眺望が開ける恵まれた環境。北には住宅街の広がり、南には緑越しに穏やかな風景が連なる。その二つの景色を等しく暮らしへ取り込むため、住宅は五つの独立したボリュームによって構成され、その間に生まれる余白が生活空間として機能する。
住まいの中心には、ホールのような広がりを持つリビング。その周囲にキッチン、主寝室、子ども室、水回り、多目的スペースの五つの箱が点在する。特徴的なのは、それぞれを廊下で結ぶのではなく、箱と箱の「あいだ」を積極的に居場所としてデザインしている点だ。
その余白は、ダイニングであり、スタディースペースであり、タイルテラスでもある。内と外をゆるやかにつなぎながら、光や風、視線を建物全体へ巡らせる装置として機能している。
どこに立っても視線は箱の隙間を抜け、庭や遠景へと自然に導かれる。空間は閉じることなく緩やかに連続し、住宅全体に軽やかな奥行きを生み出している。
この住宅では、「隙間」は残された空間ではない。建築を成立させるもう一つの主役である。
計画の背景には、人と猫が心地よく共生する環境を実現するというテーマがある。
その考えは平面構成にも反映され、五つの箱の一つは猫たちの居場所として計画された。人と猫の生活動線を整理しながら、互いの気配は感じられる距離感を保つことで、暮らし全体に自然なリズムを生み出している。
キッチンは、この住宅の回遊性を象徴する空間だ。
独立した一つの箱として計画されたキッチンには三方向の出入口が設けられ、それぞれ異なる空間へと接続する。リビング側へ開けばタイルテ ラスと庭へ視線が伸び、反対側では住宅街の眺望を取り込む。ダイニングへ直結する動線は、日々の家事を効率化すると同時に、住まい全体との一体感を高めている。
シンク前にはスタディースペースを望む開口が設けられ、家事をしながらでも住まい全体の気配を感じ取ることができる。閉じた作業空間ではなく、家族の活動をゆるやかにつなぐハブとして機能するキッチンである。
主寝室と子ども室は庭に向かって配置され、その間にはタイルテラスを挟むことで、屋内外が一続きの生活領域として広がる。水回りのボリュームには家事室やファミリークローゼット、設備スペースを集約し、上部にはロフトを設けるなど、一つの箱に複数の機能を重ね合わせている。
さらにリビングに面する壁面は、プロジェクターのスクリーンとしても活用される。用途を限定せず、一つの要素に複数の役割を持たせる設計思想が、住まい全体に柔軟性と奥行きを与えている。
五つの箱は、それぞれが独立した部屋でありながら、隙間によって一つの建築へと結び付けられている。
壁で区切るのではなく、余白でつなぐ。
その発想が、高台に広がる二つの風景を暮らし の中へ取り込み、光や風、視線、そして家族や猫の気配までも、建築の一部として編み上げている。
[ DATA]
設 計: 株式会社GAB
一級建築士事務所(担当/濱元宏)
敷地面積: 443㎡(約134坪)
建築面積: 168㎡(約50.8坪)
延床面積: 153㎡(約46.3坪)
用途地域: 第一種低層住居専用地域
構 造: 壁式鉄筋コンクリート造
完成時期: 2024年5月
建 築: 株式会社GAB
(担当/濱元宏、豊崎孟史)









